「関係に投資する」― まちづくりプレイヤーと交わる夜会 ―トークイベント イベントレポート

こんにちは、サラボ運営スタッフのHarunoです😃
2026年7月1日(水)に開催した『関係に投資する』― まちづくりプレイヤーと交わる夜会 ―のイベントレポートをお届けします!
IVS2026開催期間中、京都・烏丸六角のコワーキングスペース「saladbowl(サラダボウル)」を期間限定で一般開放し、IVS参加者と京都で活動する地域プレイヤーが交流できるオープンデイを開催しました!❤️🔥
今回のセッションは、そのオープンデイ期間中の夜に開催した特別企画です。イベント前半では、ゲスト3名それぞれに、ご自身の活動や取り組みについてお話しいただきました。
目次
- 1.👤ゲスト 株式会社ツナグム(移住定住)代表取締役 田村 篤史 氏
- 2.👤ゲスト TERA Energy株式会社(ファンドレイジング)循環デザインユニット COO 村野 大輔 氏
- 3.👤ゲスト NPO法人コミュニティ・スペースsacula(こどもの居場所づくり)代表理事 木村友香理 氏
- 御三方の自己紹介の後のディスカッションでは、木村さんの「ノリと勢いでやってしまう」という話を受けて、科田さんから「田村さんも勢いを大事にしていますか?」という質問が投げかけられました。
- 4.「居場所」とは、場所ではなく人との関係性
- 5.「関係につながれない人」をどう考えるのか
- 「選ばれることも、選ばれないこともご縁。知らない世界があること自体も悪いことではない。」
- 6.レールは一つじゃない
- 「住む場所も、働き方も、本当は自分で選んでいい。」
- みんなと同じレールだから安全とは限らない。若いうちにいろいろなレールをつくっておくことが大切。小さなドロップアウトをたくさん経験しておくことが、人生の選択肢を増やすことにつながる。
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1.👤ゲスト 株式会社ツナグム(移住定住)
代表取締役 田村 篤史 氏
株式会社ツナグムは、「京都移住計画」を運営する京都のまちづくり会社です。移住促進や地域コミュニティの運営、企業・行政との協働を通して、人と地域をつなぐさまざまな事業を展開しています。

田村さんは京都・長岡京市のご出身。一度は就職で東京へ移りましたが、東日本大震災をきっかけに京都へUターンし、「京都移住計画」をタナカ ユウヤ 氏と立ち上げられました。
「ツナグム」という社名は、「つなぐ」と「うむ」を掛け合わせた造語。「人や地域をつなぎ、新しい価値を生み出す」という思いが込められているそうです。
当日は、京都移住計画が2025年頃から発行している紙メディア『かもかも新聞』も持参してくださいました。『かもかも新聞』は、コラムや読者投稿、京都のおすすめスポットなどを通して、ウェブとは異なる視点から京都で暮らす人や地域の魅力を伝えている媒体です。
「かもかも新聞」を創刊しました! | 京都移住計画このたび京都移住計画では、自社発行の紙メディア『かもかも新聞』を創刊しました。 京都移住夜会や季節行事など、日頃私たちが開kyoto-iju.com
京都移住計画が活動を始めた2011年頃は、まだ「地方創生」という言葉が一般的ではない時代。移住を希望する人を迎え入れ、地域とのつながりをつくる活動を続ける中で、「私たちの地域でも○○移住計画を立ち上げたい」という相談が全国から寄せられるようになったそうです。
その際は、京都移住計画が大切にしている考え方を共有しながらも、運営方法はそれぞれの地域に委ねるスタイルを取っているとのこと。岩手県をはじめ、各地域が独自の形で活動を展開しているというお話が印象的でした。
また、京都産業大学やQUESTION(コミュニティバンク・京信)と連携した共創支援にも取り組まれています。
「大学」や「金融機関」と聞くと、どこか堅い組織という印象がありますが、ツナグムでは、そうした組織がより柔軟に新しい挑戦ができるような場づくりや伴走支援を行っているそうです。
ツナグムでは「衣・食・住」ならぬ、「居・職・住」という言葉を掲げています。
「移」は居場所や地域とのつながり
「職」は仕事
「住」は暮らす場所
それぞれを切り離して考えるのではなく、一人ひとりの暮らし全体を支える視点を大切にしているというお話でした。
2.👤ゲスト TERA Energy株式会社(ファンドレイジング)循環デザインユニット COO 村野 大輔 氏
続いて登壇されたのは、テラエナジー株式会社の村野 大輔 氏です。
テラエナジーは、「応援する電気」をコンセプトに電力を販売している会社。「テラ」は「寺」に由来しており、お坊さんが立ち上げた電力小売事業者です。

電力の完全自由化から約10年が経ち、現在は数多くの電力会社がありますが、お坊さんが運営する電力会社は非常に珍しい存在。お寺をはじめとした寺院関係の利用者も多いそうです。
村野さんは以前、「営業」という肩書きを使っていましたが、現在は「循環ビルダー」と名乗っています。一方的に売る営業ではなく、人・地域・想いが循環していく仕組みをつくる存在でありたいという思いから、この肩書きに変えたそうです。
また、プライベートではお城の御朱印、「100名城スタンプ」を集めるほどお城巡りが好きと意外な一面も紹介してくださいました。
イベントでは、「なぜお坊さんが電力会社をつくったのか」という創業の背景についてもお話がありました。
代表の竹本了悟氏は、幼少期にいじめを経験したことから「誰かを守る仕事がしたい」という思いを抱き、海上自衛隊へ入隊。しかし、理想と現実のギャップを感じて退職し、その後大学院で仏教を学ぶ中で、人を支えることの本質を考えるようになったそうです。
その後、ドイツの地域経済循環モデル「シュタットベルケ」という仕組みに出会います。地域で生まれた利益を地域へ還元し、まち全体で支え合う考え方に共感し、「この仕組みを日本でも実現したい」と考えたことが、テラエナジー設立のきっかけとなりました。
テラエナジーの「応援する電気」は、契約者が電気を利用することで、電気料金の一部が社会や地域への応援につながる仕組みになっています。ただ電気を売るだけではなく、お金や想いが循環する仕組みそのものを届けたいという考えが印象的でした。
3.👤ゲスト NPO法人コミュニティ・スペースsacula(こどもの居場所づくり)代表理事 木村友香理 氏
最後にご紹介いただいたのは、子どもや若者の居場所づくりに取り組む「sacula」の木村 友香理 氏です。
木村氏は社会福祉士の資格を持ち、現在は4つの仕事を掛け持ちしながらソーシャルワーカーとして活動されています。
意外にも学生時代はフェンシングに打ち込む体育会系。卒業後は生命保険会社で営業職として働き、社会経験を積んだ後、学費を貯めて福祉の専門学校へ進学しました。
現在は、経済的な困難を抱える方が無料で法律相談を受けられる「法テラス」の相談につながる前段階の支援にも携わり、日々さまざまな悩みを抱える方の相談を受けています。
木村さんが代表を務める「sacula」は、今年で活動10周年。子どもや若者が安心して過ごせるコミュニティカフェとして、多くの人に親しまれています。
現在力を入れている取り組みの一つが、「すずなりランタン」です。
この活動では、お客さんが100円で「ギフトカレーチケット」を購入し、メッセージを書いて店内に残します。そのチケットを必要とする子どもや若者が利用できる仕組みになっており、地域の人たちが自然な形で応援に参加できる取り組みです。
また、岐阜県出身の木村氏は、地元の「モーニング文化」に着想を得て、朝から夕方までモーニングを提供するなど、誰でも気軽に立ち寄れる居場所づくりにも取り組んでいるそうです。
「専門性を発揮すること以上に、地域の常連さんや若者たちとどれだけ関係性を築けるかを大切にしている」と話します。活動を続ける中で、常連さん同士や地域の方々とのつながりも少しずつ生まれ、子どもや若者だけでなく、地域の人たちにとっても居心地の良い”第三の居場所“へと育ってきました。
「ノリと勢いで始めたことも多いんです」と笑いながら話す木村さん。その柔軟な姿勢が、若者たちの「やってみたい」という気持ちを自然と後押しし、新しい挑戦が次々と生まれているのだと感じました。

御三方の自己紹介の後のディスカッションでは、木村さんの「ノリと勢いでやってしまう」という話を受けて、科田さんから「田村さんも勢いを大事にしていますか?」という質問が投げかけられました。
田村さんは現在
自宅の隣にある古民家を購入しようと考えているそうです。
「今のところ明確な使い道はない。でも、他の人に買われたくないという気持ちがある。自分が暮らす地域を守るという意味で買いたいんです。」
そう話しながらも、「もし本当に手に入ったら、こんなこともできそう、あんなこともできそう、と次々にアイデアが湧いてくる」と笑顔で語られていました。
これまでは「相談されたら応える」という受け身の姿勢が多かったと振り返り、「自分たちから仕掛けていく木村さんの姿勢に刺激を受けた」と話していたのが印象的でした。
4.「居場所」とは、場所ではなく人との関係性
続いて話題は、「みなさんの活動は、自分自身の居場所づくりにもつながっているのでしょうか?」という問いへ。
科田さんは、「居場所」という言葉は単なる施設や空間ではなく、自分が安心できる人や関係性も含めたものではないかと投げかけます。
村野さんは、テラエナジーがとてもフラットな組織であることを紹介。
また、大人数の交流会では話しづらい人もいることから、「トーキョーコーヒー」というコミュニティ活動についても紹介してくださいました。
「トーキョーコーヒー」は、「登校拒否」のアナグラムから名付けられた取り組みで、大人たちが気軽に集まり、自由に交流できる場。きっちりとした枠組みではなく、それぞれが自分らしく参加できる余白を大切にしているそうです。
5.「関係につながれない人」をどう考えるのか
会場のゲストからは、今回のイベントテーマにもつながる問いが投げかけられました。
「人とのつながりが価値になっていく一方で、そうした場に参加できない人や、参加したくない人は取り残されてしまうのでしょうか。」
この問いに対し、田村さんは「とても味わい深い問いですね」と前置きしたうえで、自身の考えを話しました。
SNSなどによって情報が個別最適化され、すでに社会にはさまざまな分断が存在している。その中で、その人自身が今の環境に満足し、幸せを感じているのであれば、それは一つの選択なのではないか。
一方で、「今のままでは嫌だ」と感じている人がいるなら、その人が新しい一歩を踏み出せるよう手助けをしたい。とも回答をされていました。
「選ばれることも、選ばれないこともご縁。知らない世界があること自体も悪いことではない。」
そんな言葉が印象に残りました。
科田さんも、高齢者の居場所づくりについての事例を紹介。地域とのつながりを勧めても、「もう関わらないでほしい」と断られる方もいるそうです。
だからこそ、「つながること」を押し付けるのではなく、その人自身の選択を尊重することも大切なのではないか、という意見が交わされました。
木村さんも、「選択肢があるだけでは難しく、その人自身が選び、決断できる力も必要なのではないか」と話していました。
6.レールは一つじゃない
終盤では、「会社だけがコミュニティになってしまうこと」の難しさについても話題になりました。
田村さんは、会社というコミュニティしか持っていない人は、退職した途端に新しい場所へ飛び込むことが難しくなると話します。
「住む場所も、働き方も、本当は自分で選んでいい。」
以前、「住む場所って自分で決めていいんですね」と話してくれた人の言葉が、とても印象に残っているそうです。
満員電車で疲れ切った表情の人たちを見ながら、「本当にこの電車に乗りたくて乗っている人はどれくらいいるんだろう」と考えたこともあったと言います。
みんなと同じレールだから安全とは限らない。若いうちにいろいろなレールをつくっておくことが大切。小さなドロップアウトをたくさん経験しておくことが、人生の選択肢を増やすことにつながる。
その言葉は、この日のイベント全体を締めくくるメッセージのようにも感じられました。
7.まとめ
今回のイベントを通して印象的だったのは、
「居場所」とは単に空間をつくることではなく、人との関係性や、その場にいる人たちの姿勢によって育まれていくものなのだ
ということでした。
地域で新しい挑戦をする人、誰かを応援する仕組みをつくる人、子どもや若者の居場所を育てる人。それぞれ活動は異なりますが、共通していたのは、「まずは自分たちが楽しみながら一歩を踏み出している」という姿勢でした。
そうした大人たちが地域の中でさまざまな選択肢や居場所をつくっていくことで、若い世代も「こんな生き方があるんだ」「こんな働き方を選んでもいいんだ」と、自分らしい道を選びやすくなるのかもしれません。
そして、本当に大切なのは場所そのものではなく、楽しそうに挑戦する大人の背中を見せること。その姿が、新しい一歩を踏み出すきっかけとなり、また次の誰かへとつながっていくのだと感じた時間でした。
ご登壇いただいた皆さま、ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!
