医療用品業界の受発注DXは「品番・規格管理」から考えよう――Bカート×RPA活用法
公開 2026年09月29日
目次
病院やクリニック、介護施設などへ医療用品を販売する企業では、今もFAXや電話、メールによる注文が残っているケースがあります。
受注した内容を担当者が確認し、商品コードを調べ、販売管理システムへ入力する。こうした業務は一見すると一般的な卸売業と同じですが、医療用品では少し事情が異なります。
たとえば同じ商品名でも、サイズや容量、入数、型式などによって品番が細かく分かれていることがあります。
「商品そのものは合っているけれど、規格が違う」
そんな間違いを防ぐために、受注担当者がFAXを見ながら商品マスタを検索し、品番を確認している企業もあるのではないでしょうか。
こうした受発注業務を効率化するとき、単純に「FAXをWeb注文に変える」だけでは十分とは限りません。
大切なのは、注文された段階から、後工程でそのまま利用できる正確なデータを作ることです。
今回は、BtoB EC・受発注システム「Bカート」とRPAを組み合わせ、医療用品業界の受発注業務をどのように効率化できるのかを考えてみます。
医療用品では「商品名」だけでは注文を特定できない
医療用品には、一つの商品に複数の規格が存在するものが少なくありません。
- サイズがS・M・Lに分かれている
- 容量が100mL・500mLなどに分かれている
- 10個入り・50個入りなど入数が異なる
- 型式や規格によって商品コードが異なる
- 左右などの違いがある
- コンタクトレンズでは度数・カラー・BCなどの組み合わせがある
たとえばFAXに「○○グローブ Mサイズ 5箱」と記載されていた場合、受注担当者はその内容から正しい商品コードを探さなければなりません。
記載が不鮮明だったり、取引先が以前の品番を使っていたりすれば、確認の電話が必要になることもあります。
こうした業務では、入力作業そのものよりも、「どの商品を指しているのか確認する作業」に時間がかかります。
Bカートでは、一つの商品ページに複数の品番を登録して販売できます。Bカート公式サイトで紹介されているコンタクトレンズ卸の活用例でも、「度数」「カラー」「BC」などによって複数存在する品番を、一つの商品ページ上で選択できる仕組みが紹介されています。
FAXの自由記述を担当者が読み取って品番へ変換するのではなく、注文する側に、あらかじめ登録された正しい規格・品番を選んでもらう。
こうすることで、受注後に「この商品で合っているのか」を確認する作業を減らしやすくなります。
取引先によって価格や販売商品が違ってもWeb化できる
BtoBの受発注をWeb化するときによく出てくるのが、「得意先によって販売価格が違うので、普通のECサイトでは対応できない」という問題です。
たとえば同じ医療用品であっても、取引条件によって販売価格が異なったり、特定の取引先だけに案内している商品があったりする場合があります。
Bカートでは、会員が所属する価格グループに応じて販売価格を変えたり、表示グループによって見せる商品を制御したりできます。
そのため、
- この病院にはどの価格で販売するのか
- この取引先へどの商品を表示するのか
といった条件を、受注するたびに担当者が確認するのではなく、あらかじめシステム側へ設定しておく運用を検討できます。
実際にBカートのサイト事例には、日本紙通商株式会社が運営する、業務用医療用品や健康飲料を取り扱う事業者向け会員制オンラインショップも掲載されています。
BtoB ECというと「誰でも購入できる通販サイト」をイメージするかもしれませんが、取引先を限定した会員制の受発注サイトとして利用することもできます。
繰り返し注文する医療消耗品はWeb発注と相性がいい
医療用品の中には、一度購入したら終わりではなく、継続して補充する商品もあります。
手袋やマスク、衛生用品など、いつも同じ商品を繰り返し購入している取引先であれば、毎回FAXへ商品名や品番を書いてもらう必要はありません。
Bカートには、過去の注文履歴から商品を再びカートへ入れられる「再発注機能」があります。また、いつも注文する商品の組み合わせを「発注リスト」として登録しておくこともできます。
取引先から見ても、
- 前回と同じ商品をもう一度注文したい
- いつもの消耗品をまとめて発注したい
といった作業がしやすくなります。
Web化は受注側の入力作業を減らすだけでなく、発注する側にとっても、商品を探したり品番を書き写したりする手間を減らせる仕組みにすることが大切です。
Bカートで受けた注文をRPAで販売管理システムへつなぐ
Webで注文を受けられるようになっても、その後に担当者がBカートを見ながら販売管理システムへ手入力していたのでは、業務全体の効率化にはつながりません。
そこで活用できるのがRPAです。
たとえば、次のような流れを作ります。
病院・クリニック・医療施設
↓
Bカート
↓
RPA
↓
商品コード・得意先コードを変換
↓
販売管理システム
↓
在庫確認・出荷処理
Bカートでは、受注情報をCSV形式で出力できます。また、用途に合わせて必要な項目や並び順を設定したカスタムCSVを作成し、既存の基幹システムなどとのデータ連携に利用することもできます。
そのデータをRPAで処理すれば、たとえば次のような業務を自動化できます。
- Bカートから受注データを取得する
- Bカートの商品コードを社内の商品コードへ変換する
- 会員情報から販売管理システムの得意先コードを設定する
- 販売管理システムへ受注データを登録する
- 必要に応じて出荷用データを作成する
- 処理結果をログへ記録する
- 処理できなかった注文を担当者へ通知する
ポイントは、Bカートですべての業務を完結させることではありません。
Bカートを「注文の入口」、RPAを「既存システムとの橋渡し」にするという考え方です。
すでに利用している販売管理システムや在庫管理システムを無理に入れ替えなくても、受注部分から段階的にデジタル化できる場合があります。
ロット番号や使用期限は、後工程のシステムで管理する
医療関連の商品を扱う場合、もう一つ考えておきたいのがトレーサビリティです。
医療用医薬品や医療機器等では、商品識別コードに加えて、有効期限やロット番号などを含むGS1標準のバーコードが、流通の効率化やトレーサビリティ確保に活用されています。
ただし、受発注をWeb化するからといって、こうした情報をすべてBカートで管理しなければならないわけではありません。
Bカート
「どの取引先が、どの商品を、何個注文したか」
↓
RPA
「社内の商品コード・得意先コードへ変換」
↓
販売管理・在庫管理システム
「どの在庫・ロットから出荷するか」
↓
倉庫・出荷
このように、注文を受け付ける仕組みと、在庫・ロット・出荷を管理する仕組みを分け、それらの間をデータでつなぐ方法も考えられます。
既存システムの役割をすべてBtoB ECへ移すのではなく、それぞれのシステムが得意な部分を担当させるほうが、現実的なDXになるケースもあります。
FAXを最初からなくす必要はない
Web受注を導入するとき、「現在FAXを使っている取引先を、すべてWeb発注へ切り替えなければならない」と考える必要はありません。
長くFAXで注文してきた取引先に、ある日突然Web発注だけを求めると、問い合わせが増えたり、取引先側の負担が大きくなったりすることもあります。
そこで、たとえば次のように段階的に移行します。
- 新規取引先は原則としてWeb発注にする
- Webへ移行しやすい既存取引先から順次切り替える
- FAXを希望する取引先は当面そのまま受け付ける
Bカートでは、電話やFAXなどで受け付けた注文を管理者が新規受注として登録する機能も用意されています。
最初から「FAXをゼロにする」ことを目標にするのではなく、Web注文の割合を少しずつ増やし、手入力する受注件数を減らしていく方法です。
想定ケース:医療用品卸A社の場合
ここで、医療用品を病院やクリニックへ販売しているA社を例に考えてみます。
※以下はBカートとRPAを組み合わせた場合のイメージを説明するための想定ケースです。
導入前:FAXを見ながら商品コードを探す
A社では、取引先からFAXや電話で注文を受けています。
FAXを確認
↓
商品名・規格を確認
↓
商品コードを検索
↓
取引先ごとの販売条件を確認
↓
販売管理システムへ入力
↓
出荷処理
特に時間がかかるのが商品確認です。
似た商品名が複数あり、さらにサイズや容量、入数が異なるため、「商品は合っているがサイズが違う」「同じ商品でも入数が違う」「旧品番で注文されている」といったケースを担当者が確認しています。
Bカート導入後:注文時点で商品を特定する
そこで、まず一部の取引先からBカートによる発注へ切り替えます。
取引先は、あらかじめ登録された商品の中から、「商品 → 規格 → 数量」を選択して注文します。
これによって、担当者がFAXの記載内容から商品コードを判断する作業を減らします。
さらにRPAを導入:通常注文は自動処理へ
次にRPAでBカートから受注データを取得し、社内の商品コード・得意先コードへ変換して販売管理システムへ登録します。
一方で、
- 商品コードへ変換できない
- 登録されていない得意先である
- 通常とは大きく異なる数量が注文されている
- 廃番商品や代替品の確認が必要
といった注文だけ担当者へ通知します。
こうすることで、担当者の仕事を、「すべての注文を入力する」から「例外のある注文を確認する」へ変えていくことができます。
すべてを自動化する必要はない
RPAを導入すると、「できるだけ人の作業をなくしたほうがいい」と考えがちです。
しかし、医療用品の受発注では、人による判断を残したほうがよい処理もあります。
自動処理しやすい注文
- 登録済みの取引先
- 登録済みの商品
- 商品コード・得意先コードの変換に成功している
- 通常範囲の数量
- 特別な確認事項がない
人が確認したほうがよい注文
- 商品を特定できない
- 廃番商品が含まれている
- 代替品への変更が必要
- 通常とは大きく異なる数量
- 特別な販売条件がある
- システムだけでは判断できない例外がある
100件の注文を人が100件確認するのではなく、通常の注文はシステムに任せ、人は確認が必要な注文に集中する。
受発注DXでは、このような「例外だけ人が確認する仕組み」を作ることが一つの目標になります。
まとめ――注文時点で「正しいデータ」を作る
医療用品の受発注では、単にFAXをWeb画面へ置き換えればDXが完了するわけではありません。
重要なのは、注文された時点で、後工程でも利用できる正しい商品・規格・数量のデータを作ることです。
Bカートを利用すれば、登録された商品・規格から取引先自身に選択してもらい、取引条件に応じた価格や商品表示を設定できます。
さらに、そのデータをRPAで既存の販売管理システムへつなげれば、担当者による転記作業を減らすことができます。
受注システム、RPA、販売管理・在庫管理システム。
一つのシステムですべてを解決しようとするのではなく、それぞれをデータでつなぐ。
医療用品業界の受発注DXを検討するときは、まず現在の注文方法を見直し、「人が商品を判断して入力している作業はどこにあるのか」を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。
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